乗馬クラブの「暑さ問題」を放置しない。馬にも人にも効く“遮熱+換気+ミスト”の現実解
導入:夏の乗馬は「楽しい」反面、暑さが“事故の入口”になる
夏になると、乗馬クラブではこんな声が増えます。
- 「屋内馬場なのに、なぜか息苦しい」
- 「厩舎がムワッとして、馬がだるそう」
- 「レッスン後、馬の呼吸が戻りにくい気がする」
- 「スタッフも会員さんも、体力が削られる」
暑さは“気合い”で乗り切るものではなく、**環境(建物・風・湿度・日射)**で大きく変わります。そして、暑さ対策は「馬のため」だけではなく、会員満足度・安全管理・スタッフ定着にも直結します。
まず押さえたい前提:馬の快適な温度帯は「おおむね7~23℃」
農林水産省の「馬の飼養管理に関する技術的な指針」では、馬の適温域は**おおむね7~23℃**が目安とされています(馬は発汗性である程度の暑さに耐えられる、とも記載)農林水産省
つまり日本の夏は、そもそも“適温から大きく外れる”前提。
「暑いのは仕方ない」ではなく、暑熱ストレスのリスクを理解し、対策を講じることが管理者に求められる、という整理になります農林水産省
現場で起きる「暑さ問題」:馬も人も、パフォーマンスが落ちる
暑熱ストレスが続くと、馬はもちろん、人も消耗します。
馬側:熱ストレスの“サイン”を見逃すと危険
US Equestrian(USEF) では、熱ストレスの症状として例えば以下を挙げています。
- 直腸温の上昇(運動後に104°F(約40℃)超が目安のひとつ)
- だるい・動きが重い・パフォーマンス低下
- 口を開けた呼吸、呼吸数増加
- 汗をかかない(無汗) など
USEF
さらに文献レビューでも、暑熱ストレスは運動能力・健康・疾病リスクに悪影響を及ぼし、重度では熱中症が生命に関わることが述べられていますPMC
人側:暑いクラブは「通う気力」も削る
会員さんは「今日は暑いからやめよう…」となりやすく、スタッフは作業効率が落ちます。
結果として、稼働率・継続率・安全がじわじわ落ちていくのが、乗馬クラブの暑さ問題の怖いところです。

ムワッとする暑さは「湿度×換気不足」のサインになりやすい。
原因は3つ:「日射(輻射熱)」「湿度」「空気が動かない」
乗馬クラブの暑さは、気温だけで決まりません。効き方が強いのはこの3点です。
- 屋根・外壁からの輻射熱(体感温度を押し上げる)
- 湿度が高く、汗(発汗)や蒸発で冷えにくい
- 換気不足で“熱と湿気”が抜けない(厩舎・屋内馬場)
農林水産省の指針でも、暑熱時は「厩舎内の温度上昇を抑制する対策」を講じ、症状が見られる場合には大型扇風機による送風、屋根への散水、細霧システムなどの対策が例示されています農林水産省

冷やす前に、まず“入る熱(輻射熱)”を減らす。
対策は「足し算」ではなく“順番”が重要(おすすめ設計)
暑さ対策は、闇雲に機器を増やすより ①入る熱を減らす → ②熱を逃がす → ③体を冷やす の順番が効きやすいです。
① 入る熱を減らす:遮熱(屋根)が「効きやすい理由」
屋根は、夏の直射日光を最も受ける面。
ここでのポイントは「温度を下げる」だけでなく、輻射(放射)を減らして“体感”を下げることです。
- 遮熱塗料
- 遮熱シート(遮熱材)
- 屋根断熱(断熱材)
など、建物条件により選択肢が変わります。
実例として、厩舎の暑さ対策に扇風機・換気設備・ミスト冷房・遮熱塗料などを導入してきたケースが紹介されていますドライフォグ
② 熱を逃がす:換気は“馬体に風を当てる”だけではない
暑さ対策=扇風機、となりがちですが、換気は本来「空気の質と熱の排出」が目的です。
農林水産省の指針でも、換気は馬の健康・ウェルフェア上重要で、厩舎全体に常に新鮮な空気を供給できる設計が求められる一方、暑熱時の換気は熱排出や体熱放散を助けるが「馬体への送風だけが目的ではない」点に注意が必要とされています農林水産省
③ 体を冷やす:ミスト/散水/クールダウン動線
「最後の仕上げ」が、馬体の冷却と回復導線です。
- 日陰+扇風機
- 冷水で冷却(運動後のクールダウン)
- ミスト(ただし湿度管理と換気がセット)
USEFでは、暑い時の対応として「鞍を早く外す→日陰へ→冷水で冷やす」「多くの馬は、冷たい水浴び+飲水+日陰やファンで回復する」と説明されていますUSEF
また、文献レビューでは、送風(ファン)や冷水が有効で、ミストファン・冷水散水・送風を組み合わせることで冷却が促進される、とまとめられていますPMC

換気は“馬体に風を当てる”だけでなく、熱と湿気を外へ捨てる仕組み。
「やってるのに暑い…」となる理由:遮熱と換気が噛み合っていない
乗馬クラブでありがちな失敗は次の2つです。
- ミストだけ増やして湿度が上がり、余計にムワッとする
- 扇風機を回しても、熱源(屋根の輻射熱)が強くて焼け石に水
この状態だと、対策は“コスト”に見えてしまいます。
だからこそ、遮熱は「冷やす」ではなく、そもそも熱を入れないという意味で土台になりやすいです。

ミスト単体で増やすと湿度が上がる。換気と組み合わせて“体感”を落とす。
乗馬クラブの現場感がある対策例
乗馬クラブの現場でも、扇風機・ミスト・シェード(日よけ)などを活用している旨が紹介されています乗馬クラブ グリーンヒル
また、厩舎にミスト冷房を導入し、温度が1~2℃下がった、換気(扇風機)と組み合わせて湿度の不快感を抑えた、という事例もありますドライフォグ
参考画像
※以下は、検索結果から取得した参照用リンクです(画像そのものの利用条件は、各リンク先のライセンス表示をご確認ください)。
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厩舎の換気イメージ(大型換気)
Equine Mechanical Ventilation(Canarm) -
換気方式と厩舎内環境の比較図(研究系の図解)
Horsekeeping: Influence of Three different Ventilation systems…(Agrarforschung Schweiz)
参考動画
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運動後のクールダウン例
https://www.youtube.com/watch?v=uG1GFF1oVhg -
「暑すぎて乗るべきか?」の判断に関する動画
https://www.youtube.com/watch?v=Jak0OOQhHEQ

陰・冷水・送風を“動線”で用意すると、回復が早い。

「屋内=安全」ではない。熱と湿気が抜けないと体感は悪化する。
まとめ:乗馬クラブの暑さ対策は「遮熱→換気→冷却導線」で設計すると強い
最後に要点を一行でまとめます。